「すごい、県大会いけるよー!」
「本当、よく頑張ってたわね」
感動で涙目になっている朝子を見て苦笑しながら、美空はコートに目を向けた。嬉しそうにしている輪の中に今日は悠輝も入っている。彼がどんな表情をして
いるのかなんて、見えはしないけれど。
そ
んな僕らの裏事情
「お疲れ様」
相変わらず、ふたりがいるのは美空の部屋だ。
「ありがとう。今日ばっかりはさすがに疲れたよ」
「あら、めずらしい」
からかう美空の声も弾んでいる。
「でも、よかったわ」
「美空のおかげだよ」
その言葉に、美空は首をかしげる。
「私、何かしたかしら?」
本気で考え込む美空に、悠輝は苦笑する。
「応援来てくれたし」
「べ・・・っ別にそれは普通でしょっ」
「でも、応援があるから頑張れるんだよ」
顔には出していなくても、応援してくれる彼女の姿を見つめていると頑張れる。
「―――そっ。役に立っててよかったわ」
ふぃっと顔をそらすのは彼女の照れ隠し。
「うん。ありがとう」
「県だけで終わらないようにね」
せめて全国大会に行きなさい、と。それは他の誰でもなく美空の願望だったかもしれない。彼女は次へ進めなかったから。
「そうだね、できる限り頑張るよ」
君が応援してくれるなら。それは口には出さなかったけれど。
それが一番のチカラになる。なんて、美空には言わないけれど。
「―――そういえば」
「? 何よ」
「もうすぐ夏祭りだよね」
美空は何よいきなり・・・といった顔になるが、素直に頷いた。
「そうね」
だんだん季節は夏へと近付いている。もうすぐ、夏休み。
「だけど受験生・・・・・・」
「何今からバテてるのよ、朝子」
机にうつぶせている朝子を見やり、呆れた顔と声でそれを伝える。だが朝子はそれにすら気付かない。
「夏バテになりました」
「まだ夏じゃありません」
「う・・・」
相変わらず厳しい口調だが、事実は事実だ。
「でも、気が重いよー。受験なんて嫌ー」
「仕方ないわよ、否が応でもやってくる悪夢なんだから」
美空も肩をすくめる。
受験が楽しみな人などどこにいるというのだろう。
「わからないところなら教えてあげるよ?」
見かねた、のか入るタイミングを図っていたのかは知らないが、斜めの席から声をかけてくる平良。
「平良く〜ん!!」
ばっと起き上がって振り返り、ありがとう!! と瞳をキラキラさせる朝子。
「はいはい、勝手にやってなさい」
呆れに呆れて美空は彼らとの会話を放棄した。が。
「でもさぁ、高校になったらみんなばらばらだよねー」
朝子のその一言に、ドクンと鼓動が高鳴った。
「馬鹿ね、会おうと思えばいつでも会えるわよ」
前を向いてしまった美空の表情は、見えない。
「それはそうだけどー」
まだぶつぶつ言っている朝子を、美空は思いっきり無視した。心の中の動揺を、悟られたくはなかったから。そんな美空を、少し遠い後ろから悠輝が見てい
た。